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John Coltrane: Blue Train (Blue Note)

August 1st, 2007 · No Comments

blue train

ちょうど私がモダン・ジャズにのめりこみ始めた80年代初頭というのは、ブルーノートの国内発売の権利があちこち移動していたようで、そのせいか最初の頃はほとんど見かけませんでした。もっともその頃は「ないことすら分からない」状態で、例えばビル・エバンスのリバーサイド物を買うとライナーノーツ裏に広告もかねて「ジャズ50選」などというヴィクター系(プレスティッジ、リバーサイド、コンテンポラリー系)の名盤がずらっと並んでいるのを熟読して、モダンジャズとはつまりそういうものだと思っていたわけです。'83年に東芝EMIが発売元になると、怒涛のように1500番台や4000番台を出してきて、初めてそういうレコード群があることを意識したわけです。ブルーノートで最初に手に入れたのはたぶん今日紹介するBlue Trainでした。それも、どういうわけか重量盤なんです。ひょっとしたらキング盤のほうを買っていたのかもしれませんが、帯以外に手がかりがなく(つまり完全復刻を謳っていたのでしょう)おまけに帯を取っておく習慣がなかったのでどうにも分かりませんが、中身はやはり『ブルー・トレイン』なのでマニアックな憶測はよして曲の方に行きたいと思います。

このアルバムはブレスティッジと契約を結んでいたコルトレーンを、アルフレッド・ライオンが「たった一枚だけ」と説得してブルーノートに吹き込んだアルバムで、このレーベルにおけるリーダー作としてはこの一枚だけです。録音は1957年9月15日。いつも録音にたっぷりと時間をかけるBNとしては珍しく、たった一日で吹き込んでいます。しかしたった一日で作られたとは思えないほど完成されたアルバムに仕上がっています。メンバーはリー・モーガン(tp)、カーティス・フラー(tb)、コルトレーン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)というそうそうたる顔ぶれです。

1曲目でタイトルチューンの"Blue Train"。いったい何度聴き直したでしょう。印象的なブルースのリフから始まるシンプルな12小節のブルースですが、テーマが終わってコルトレーンのソロとなるとき、巨人がゆっくりと立ち上がっていくような出だしから、急に見晴らしがよくなるというのか世界が広がるようにハーモニーが広がります。このことはマイルスの58 Milesの記事でも書きましたが、これこそコルトレーンの特質です。その後を引き継ぐのがリーー・モーガン。ほんとにやくざで不良っぽいフレーズのソロです。カーティス・フラーなんて普段はあまり意識しないけれど、ここでは印象に残るソロを取り、ピアノベースともアドリブフレーズを覚えてしまうほど聴きました。ケニー・ドリューなんていつもと違って粘っこく3連を多用しているので、ソニー・クラークと間違えそうです。

2曲目の "Moment's Notice"は一度トライしたことがありますが、コードチェンジが頻繁で難しい曲。「ああこうやって『ジャイアント・ステップ』にまで進化していったんだ」ということが分かりました。しかし、聴いている分には爽やかではつらつとした曲です。3曲目の "Locomotion"はスピードのあるブルースでこういう曲でのコルトレーンのラインは当時、「シーツ・オブ・サウンド」と呼ばれていました。カーティス・フラーはトロンボーンの性質上(JJなら別ですが)少しもたついたソロですがそれも微笑ましく、次のリー・モーガンのすばしこいソロと好対照を成しています。

4曲目はLPで言うとB面2曲目で、本当の好演奏が来るポジションですが、ここにも名バラード "I'm Old Fashioned" がきっちりと収まっています。寺島さんは「ロコモーションの勢いで、線路ぎわの石のように跳ね飛ばされる曲」といっていますが、そんなことはありません。コルトレーンの進んだハーモニック・センス、ボントロの味わいのあるソロ、ピアノと続き、その後に来るリー・モーガンはやはりすごい!構成力といい音色のつややかさといいトランペットによるバラードの典型のようなソロとなっています。最後の "Lazy Bird" もコルトレーンの曲らしくややこしい構成を持っていますが、各自素晴らしいソロを取っています。

このアルバムで巨人コルトレーンはゆっくりと立ち上がり、やがて巨大な一歩を踏み出しました。しかしこの巨人はやがて後期になり、あてどもなく内面世界を彷徨いつづける様になってしまった気がします。

Tags: Coltrane, John · Morgan, Lee · tenor sax

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