淡白なものを好む嗜好性と住宅事情のために、日本ではピアノ・トリオ物の人気がとりわけ高いです。JTでもピアノ・トリオ特集を出していたような気もしますが、よく分からないので、私の独断と偏見で10枚選び出してみました。こちらでも、モダン以前のミュージシャン、ソロ・ピアノは除外しました。順位もやはり便宜的なものです。
第1位 Explorations / Bill Evans (Riverside)
ビル・エバンス(p) スコット・ラファロ(b) モール・モチアン(b)
1.イスラエル 2.ホーンテッド・ハート 3.ビューティフル・ラブ (take 2) 4.ビューティフル・ラブ (take 1) 5.エルザ 6.ナーディス 他全9曲 (1961年)
Riverside4部作はどれも名演ですが、もっとも地味な位置にありながら、最も優れたインタープレイの妙を聴くことのできる「エクスプロレーションズ」を選んでみました。(記事を読む)
第2位 The Way I Really Play / Oscar Peterson (MPS)
オスカー・ピーターソン(p) サム・ジョーンズ(b) ボビー・ダーハム(ds)
1. ワルツィング・イズ・ヒップ 2. サテン・ドール 3. わが恋はここに 4. サンディのブルース 5. 不思議の国のアリス 6. ノリーンズ・ノクターン (1968年)
ドイツのレーベル「MPS」で録音したこのアルバムは、音のよさとあいまってオスカー・ピーターソンの本当の凄さが捉えられています。1曲目が終わって「サテン・ドール」に入っていくときの微妙なタッチなど素晴らしい。(記事を読む)
第3位 Jazz Giant / Bud Powell (Verve)
バド・パウエル(p) レイ・ブラウン, カーリー・ラッセル(b) マックス・ローチ(ds)
1. テンパス・フュージット 2. セリア 3. チェロキー 4. アイル・キープ・ラヴィング・ユー 5. ストリクトリー・コンフィデンシャル 6. オール・ゴッズ・チルン・ガッド・リズム 他全13曲 (1949・50年)
名曲「テンパス・フージット」からガンガンに飛ばす、バド・パウエルの凄さ、天才をみせつけられるアルバムです。後半はバラード集になって、メランコリックなバドのバラード解釈がよく分かります。(記事を読む)
第4位 Thelonious Monk /Thelonious Monk (Prestige)
セロニアス・モンク(p) パーシー・ヒース, ゲイリー・マップ(b) アート・ブレイキー, マックス・ローチ(ds)
1. リトル・ルーティー・トゥーティー 2. スウィート・アンド・ラヴリー 3. バイヤ 4. モンクス・ドリーム 5. トリンクル・ティンクル 6. ジーズ・フーリッシュ・シングス 他全10曲 ((1952・54年)
モンクのピアノトリオとしては初期のもので、アンダー・レイティッドだった現実に対する開き直りとも取れるシニカルなタッチでモンクス・ミュージックを展開しています。(記事を読む)
第5位 At the Deer Head Inn / Keith Jarrett (ECM)
キース・ジャレット(p) ゲイリー・ピーコック(b) ポール・モチアン(ds)
1. ソーラー 2. ベイジン・ストリート・ブルース 3. チャンドラ 4. ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ 5. あなたと夜と音楽と 6. バイ・バイ・ブラックバード 7. イッツ・イージー・トゥ・リメンバー (1992年)
キースのスタンダーズ・シリーズはどれも良作ですが、録音のよさとくつろいだ感じ、そしてすでに記事でも取り上げたので、これを挙げておきます。ポール・モチアンとは久々の再会で、これもよい方向に作用しています。(記事を読む)
第6位 Herbie Hancock Trio '81 / Herbbie Hancock (Columbia)
ハービー・ハンコック(p) ロン・カーター(b) トニー・ウィリアムス(ds)
1. ステイブル・メイツ 2. ドルフィン・ダンス 3. スライト・スマイル 4. ザット・オールド・ブラック・マジック 5. ラ・メゾン・ゴリエ (1981年)
トータルなサウンドクリエーターとしての意識が高いハービーさんにピアノトリオ作品というのは少ないのですが、この作品を聴いてみれば、紛れもない傑作。選曲もいいです。
第7位 Overseas / Tommy Flanagan (Metronome)
トミー・フラナガン(p) ウィルバー・リトル(b) エルビン・ジョーンズ(ds)
1.リラクシン・アット・カマリロ 2.チェルシー・ブリッジ 3.エクリプソ 4.ビーツ・アップ 5.スコール・ブラザース 6.リトルロック 他全9曲 (1957年)
名ドラマーエルヴィン・ジョーンズと吹き込んだトミフラのトリオ作品。エルヴィンの強力なドラムにプッシュされて、普段は温厚で控えめなタッチのトミフラも乗りに乗っています。
第8位 Speak Low / Walter Bishop Jr. (Jazz Time)
ウォルター・ビショップ(p) ジミー・ギャリソン(b) G.T.ホーガン(ds)
1. サムタイムス・アイム・ハッピー 2. ブルース・イン・ザ・クローゼット 3. オン・グリーン・ドルフィン・ストリート 4. アローン・トゥゲザー 5. マイルストーンズ 6. スピーク・ロー (1961年)
一時期幻盤扱いされていた名作。ビバップの時期からパーカーらと演奏していたピアニストのウォルター・ビショップが吹き込んだ永遠の名作。ベースのジミー・ギャリソンがこのアルバムのカギを握っています。
第9位 At the Jazz Workshop / Barry Harris (Riverside)
バリー・ハリス(p) サム・ジョーンズ(b) ルイス・ヘイズ(ds)
1. あなたの心は 2. カーテン・コール 3. スター・アイズ 4. ムース・ザ・ムーチ 5. ロリータ 6. モーニング・コーヒー 7. ドント・ブレイム・ミー 8. ウディン・ユー (1960年)
バド・パウエル直系のバリー・ハリスは通好みのピアニストで、きらびやかなものはないものの、滋味あふれる演奏で定評があります。このアルバムはライブ盤でリラックス・ムードも横溢した名盤。
第10位 Flight to Denmark / Duke Jordan (Steeple Chase)
デューク・ジョーダン(p) マッズ・ビンディング(b) エド・シグペン(ds)
1. 危険な関係のブルース 2. ヒアーズ・ザット・レイニー・デイ 3. エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー 4. グラッド・アイ・メット・パット 5. ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン 6. オン・グリーン・ドルフィン・ストリート 7. イフ・アイ・ディド・ウッド・ユー 8. フライト・トゥ・デンマーク (1973年)
テクニックに関してはいろいろ取りざたされているデューク・ジョーダンですが、それを補って余りある歌心と作曲能力でジャズ・ピアノの第一人者に数えられます。名曲 "No Problem"(=「危険な関係のブルース」), "Glad I Met Pat" の名演が聴けるのも魅力。