パーカーのアドリブラインをそのままサックスのソリで演奏するというユニークなバンドがスーパーサックスである。私はNHK-FMの『ウィークエンドジャズ』という番組でパーカーの "April in Paris" に続いて、彼らの同曲が流れたのを聞いて印象に残っている。オリジナルレコードに聞こえるパーカーのラインは音が悪いのが原因で聞き取りづらい。まして初心者では「なんか遠くのほうでめまぐるしくフレーズが回転している」としか思えない時がある。まあ慣れてくれば大丈夫なのだが。
最近になって、EMIから「ジャズ名盤999」(要するに999円)シリーズでリイシューされていたので買った。当時はもっと聞くべきものがたくさんあったので、こういうちょっと外側にあるメタジャズというかネタジャズに手を伸ばす余裕がなかったのである。そう。これは一種のネタなのである。そのせいか当時から「これはジャズか否か」なんて議論があった。答えは「主流ではないけれど、やはりジャズ」ということでいいと思う。というか、昨今はこういう問いの立てかた自体が古臭いみたいだ。
1曲目 "Koko" はサボイのオリジナルから。もう何度書いたか分からないが、元歌は「チェロキー」であり、この曲のブリッジの処理でパーカーは「頭に鳴っていた音を実現できた」と述べている。この曲はいわばビバップの聖典である。2曲目の "Just Friends" は『ウィズ・ストリングス』のテイクから取ったもの。パーカーのソロの中にずっと聞き覚えのあるフレーズがあって、でも元歌を思い出せなかったのだが、この演奏を聞いていてひょっこり思い出した。ビリー・ホリデイの "My Man" である。3曲目 "Parker's Mood" はBbブルーズの極地で、やはりサボイ・セッションのもの。この3曲で十分といえるラインナップである。
4曲目の "Moose the Mooche" はダイアル盤のソロではなくて『ロックランドパレス』のソロだと思う。アドリブの冒頭でドボルザークのユーモレスクを引用している。私はギターで「酒バラ」をやる時、アドリブラインのエンディングにユーモレスクを持ってきて遊んだりする。5曲目 "Star Eyes" はヴァーヴのセッションだが『スウェディッシュ・シュナップス』のバージョンではなくて『ジャズ・パレニアル』に入っていたバージョン。イントロの違いですぐ分かる。6曲目の "Be-Bop" はダイヤルにおける「ラバーマンセッション」からのものではなく、ロイヤルルースト・セッションのテイクのアドリブライン。7曲目 ”Repetition" 8曲目 "Night in Tunisia" は演奏も多く、ただいま捜索中。9曲目 "Oh, Lady Be Good" は、レスターのソロをパーカーが徹底的にコピーしたことで有名な曲。初期の演奏にはレスターの痕跡が残っているが、ここではまったくのオリジナルなのでJATPのテイクだと思う。最後の "Hot House"。アドリブ冒頭の1コーラスはミュージクラフトのセッションだが、残りのコーラスは不明。途中元歌である "What Is This Thing Called Love" のフレーズが出てきたりして、おそらくいくつかのアドリブをつなげたものであろう。
とまあ、こういう元ネタ探しの探偵的な聞き方も楽しいのだが、やはり驚異的なパーカーのアドリブラインと、それを演奏する倍音豊かなサックスユニゾンの響きを堪能するのが正しい聞き方だと思う。
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