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Louis Armstrong: Hello, Satchmo! Again (Universal Music)

June 14th, 2008 · No Comments

hello sachimo
久々にCDを購入しました。このCDはサッチモのコンピレーションで『ハロー・サッチモ! ミレニアム・ベスト』と対になったものです。このアルバムも、今回買ったアルバムもその音源はほとんど網羅しているのですが、こちらでフィーチャーされている "Yellow Dog Blues" や "St. Louis Blues" の収められた『W.C.ハンディー集』のLPをこの前取り出したら激しく黴が生えていて、あわててクリーニングしたものの溝に跡を残したらしくブチブチいうので困っていました。今回セールで安く買えるというメールが届いたので求めることにしました。このアルバムは権利関係を調整して、さまざまなレーベルから選り抜かれた名曲のコンピレーションです。

1曲目 "What a Wonderful World"、邦題『この素晴らしき世界』はあまりにも有名でほとんどの人がご存知だと思います。私もずっと昔からこの曲を知っていましたが「綺麗な曲だな」といった程度の認識で、それほど強い関心はありませんでした。この曲の本当の力に気づかされたのは映画『グッド・モーニング・ヴェトナム』でこの曲が使われるシーンを観たときです。まさにこの歌の歌詞通りの美しい田園がアメリカ軍の北爆で焼かれ、ヴェトナムの青年達がゲリラの疑いで裁判手続きを経ることなく射殺されていくシーンのバックにこれが流れているわけです。何たる皮肉、いや皮肉という言葉を超えて悲劇がそこにはありました。

実際『グッド・モーニング・ヴェトナム』がきっかけとなってこの曲は再ヒットしたそうです。

2曲目 "Do You Know What It Means to Miss New Orleans" は映画『ニューオリンズ』の挿入曲で、映画ではビリー・ホリデイも歌っていますが、このヴィクター吹込みではビリーを除いたメンバーでの演奏。3曲目の "Our Monday Date" は歴史的な1928年のアール・ハインズとの吹込みではなく、タウン・ホール・コンサートからのもの。

さて4曲目の "On the Sunny Side of the Street"、邦題『明るい表通りで』がこれまたナミダモノ。レスター・ヤングの記事でもかつて書きましたが、レスターの同曲と同じく、明るくて暗い、楽しくて寂しいといったニュアンスの素晴らしさが圧倒的に迫ってくる名演、絶演となっています。

5曲目の "I Surrender Dear" はスタンダード。バニー・ビガードのクラリネットとルイのヴォーカルが全面にフィーチャーされています。

そしてお目当ての "Yellow Dog Blues" と "St. Louis Blues" は『ルイ・アームストロング・プレイズ・W.C.ハンディー』というコロムビアのアルバムからの2曲。両曲ともベッシー・スミスの名演で知られ、「セント・ルイス」のほうでは若き日のルイが伴奏を勤めていますていますが(「イエロードッグ」はジョー・スミスが伴奏)、ここでのサッチモもほとんど頂点を極めたといってもいいような演奏です。「イエロードッグ」における、畳みかけとクライマックスへのもって行きかた、そして上でも書いたニュアンスは比類なきものです。「セント・ルイス」もこれに次ぐ名演で、本来の曲では第2部にあたるハバネラの部分を冒頭に持ってきて、エモーショナルに歌い上げた後、ルイ・プリマという巨漢の女性のボーカルからルイの歌、そして掛け合いへとコミカルに進んでいく、いわゆるアンチ・クライマックス(漸減法)を取りつつ、ラスト・コーラスの合奏ではルイがハイノートを駆使して演奏を盛り上げて終わります。

8曲目の "Basin Street Blues" も1928年の伝説的な吹き込みの一角をなす曲ですが、このアルバムに収められているのは、映画『グレン・ミラー物語』のサントラ音源だそうです。ベイブ・ラッシン(ts)がホーキンス流丸出しのソロを取っていて微笑ましい。ラスト近くでジーン・クルーパのドラムソロが聴かれます。

次は名盤『エラ・アンド・ルイ』からの2曲、 "Cheek to Cheek" と "Nearness of You" です。エラ・フィッツジェラルドというと『イン・ベルリン』の派手なパフォーマンスが圧倒的で、私も最初はこのアルバムが好きだったのですが、聴きなれてくると飽きる。一方ここに聴かれるエラは抑えた味わいが深く、いつまで経っても飽きない歌だと思います。続く11曲目もエラとルイが組んだアルバム『ポギーとべス』から、もちろん "Summertime"。 これも本当に名演です。

12曲目 "When It's Sleepy Time Down South(「南部の夕暮れ」)" はロスのクラブにおけるライブ録音。この曲は彼のバンドのテーマ曲だったそうです。そしてルイ晩年の最大ヒット曲 "Hello, Dolly!" が続きます。このブログのプラグインにも "Hello Dolly"というのがあって、管理画面の上にこの曲の歌詞が出てきます。

14-16は "What a Wonderful World" と同じアルバムに収録されていたものでルイ最晩年の1968年の吹込みから。もはや特に新しいことに挑戦することもなく、トランペットもかろうじて吹いているといった時期ですが、歴史と経験からしか醸し出せない実に味わいのある演奏です。

最後はサッチモのディズニー集から "When You Wish upon a Star (「星に願いを」)"。これも68年の吹き込みですが、やはりルイの人柄、やさしさがにじみ出た歌になっています。

ジャケットは藤子不二雄(A)先生。「どーん!」といってトランペットを吹いてそうなサッチモです 🙂

Tags: Armstrong, Louis · trumpet

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