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Joe Henderson: Page One (Blue Note)

October 22nd, 2007 · No Comments

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ケニー・ドーハムの「ブルー・ボッサ」はいろいろなアルバムで取り上げられていることからも分かるとおり、実に名曲ですね。16小節でCマイナーの構造を持ったこの曲には私も挑んだことがありますが、3番目の4小節の転調を上手く利用すると、私のようなヘタッピでも、そこそこムードのある演奏になるところが魅力です。オリジナルのライナー・ノーツでも、作曲者自信が「本物のメランコリーと快活さを持ち合わせた曲」といっていますが、Cマイナーの部分が「メランコリック」、3番目の4小節のD♭メジャーの部分が「快活」と分類されるでしょうか。

この曲の原型の一つが収められているのが、今日紹介するジョー・ヘンダーソンのファースト・リーダー作『ページ・ワン』です。録音は1963年6月3日。メンバーはケニー・ドーハム(tp)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ブッチ・ウォーレン(b)、ピート・ラロカ(ds)。ラテン物やアラビア物をやらせたらぴったりのサウンドが聴こえてきそうなメンツです。

1曲目が "Blue Bossa"。テーマが終わって、まずは作曲者のケニーがグロール・トーンを交えながら原曲のムードを生かしたソロを取ります。続くジョー・ヘンダーソンのテナー・ソロが実に味わい深い。最初の1枚、最初の1曲にして名声を確立してしまったかの感がある名ソロです。マッコイも畳み掛けるような独特のスタイルで曲のとりわけメランコリックな気分を強調しながらソロを進めます。ブッチのベースソロを経てテーマに戻ります。

2曲目は "La Mesha"。同じくケニー・ドーハムの曲で16小節のブルージーなムードを持ったバラード。出だしはマッコイがテンポを設定せずに自由なイントロを引き始め、その後合奏に入ります。DVD『ブルーノート物語』では、この曲をBGMにしてビート詩人の詩を朗読していて、詩とBGMのムードがぴったりで感動した記憶があります。ジョーのソロも絶品。呑んでいて背景にこの曲が流れていたりすると思わず耳をそばだてます。

3曲目の "Homestretch" はB♭のブルース。作曲はジョー・ヘンダーソン。印象的なマッコイのピアノ・ソロから合奏になりますが、そこは「コルトレーン経験」を経た世代のマッコイやジョーのこと、ビ・バップの場合のブルースとは響きが違ってきています。ケニー・ドーハムだけがバップ丸出しでソロを取っているところも微笑ましい。

4曲目 "Recorda-Me (Remember Me)"もポルトガル語を使っていることから分かるとおり、ボッサのリズムです。ジョーが高校を卒業してすぐに書いた曲であるとライナーに書かれていますが、洗練された曲想に驚かされます。ピート・ラロカも印象的なラテン風のドラミングを叩き出しています。

5曲目の "Jinrikisha" は「人力車」のこと。ただライナーでケニーは「中国の荷車」などと書いていますから、この辺の区別は余りつかないのでしょう。ちなみに英語には "rickshaw"という単語がありますが、これが「人力車」のこと。もちろん由来は「リキシャ」からです。作曲はこれもジョー・ヘンダーソン。曲はマイナーで東洋的というよりも中近東のムードを狙ったような曲想ですが日本のジャズ喫茶などにもぴったりな感じです。2種類のビートが交互に出てきて曲のムードに彩りをつけています。マッコイのソロにはまさしく日本的なものを感じさせるフレーズが多用されていますが、彼は曲名の由来をよく知っていたのかもしれません。

最後の "Out of the Night" は12小節のマイナー・ブルースでジョーの作曲。マイナスワンの練習曲に出てきそうな曲です。ソロはケニーのファンキーなソロから始まり、ジョーの抑えた感じのソロ、マッコイの華麗なソロが繰り広げられます。

ジョー・ヘンダーソン初期の最高傑作です。

Tags: Dorham, Kenny · Henderson, Joe · tenor sax · Tyner, McCoy

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