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Sarah Vaughan: Sarah Vaughan (EmArcy) | jazz.info

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Sarah Vaughan: Sarah Vaughan (EmArcy)

October 16th, 2007 · No Comments

birdland

比類なき解釈という言葉があります。音楽の文脈で使う場合、クラシックにせよジャズにせよ、ある素材となる曲をこれ以上ない位、聞き手に「ああ、この曲はこうやって演奏する、歌うためにつくられたんだな」と思わせるような演奏を指す言葉です。クラシックには疎いのですが、例えば『第九交響曲』のフルトベングラーなど、いろいろ聴いていてもやっぱり感動が違い、他の演奏を聴く場合には、むしろフルトベングラーの演奏をメートル原器として比較して聴くようなところが、私の場合あります。ジャズもクラシックと同様に「持ち歌」というような概念がないため「何某の演奏がその曲の極めつけである」といった言い方がされ、例えば「バイ・バイ・ブラックバード」はマイルスであるとか、「サマータイム」はパーカーの『ストリングス』である、「ワルツ・フォー・デビー」はエバンスの演奏であるなどと言われています。もっとも、中には百花繚乱、様々な演奏が施され、そのどれもが素晴らしいといったスタンダードもあるわけで、例えば「スターダスト」や「朝日のようにさわやかに」などは十人十色、"Everyman's in his humor"な状態で、どれを1位とするか決められない、決められないからこそ、「スターダスト特集」「ソフトリー特集」などが組まれるわけです。

"Lullaby of Birdland" (「バードランドの子守唄」)の極めつけの名唱といわれるのが、今回紹介する Sarah Vaughan (邦題『サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン』)です。メンバーは、アルバム・タイトルにもある通り、サラ・ヴォーン(vo)、クリフォード・ブラウン(tp)のほか、ハービー・マン(fl)、ポール・クィニシェット(ts)、ジミー・ジョーンズ(p)、ジョー・ベンジャミン(b)、そしてロイ・へインズ(ds)です。吹き込みは1954年12月18日。

1曲目にして永遠の名作 "Lullaby of Birdland" は、"Love Me, or Leave Me" のコード進行を使ってジョージ・シアリングが作曲した名曲。クリス・コナーが歌って、これが比類なき解釈と思われていたところに、サラの歌が出てきて「こっちが上だ」と思われたと、時系列的な聴き方ができた人は書いています。確かにクリスの歌も悪くないのですが、サラの解釈を聴くと、クリスは表面のキレイゴトに流れている感じが否めない。編成の違いなどもあるのですが、それに留まらないような部分で「勝負がついた」といえるわけです。冒頭のスキャットからして、ただならぬ気配を感じさせます。そして微妙な食い気味で歌に入ります。さびの部分では逆にタメを効かせ、そのままAメロに戻って楽器のソロにつなぎます。先発はピアノ。続いてベースが太い音でソロを聴かせたあと、ロイ・ヘインズのブラシによるソロを経て、ボーカルものとしては信じられないほど素晴らしい、4バースに繋がります。ここでもサラは技巧を極め、徐々にフレージングを複雑に音域を広げて行き、クリフォードとの4バース交換にクライマックスをもって行きます。そしてスキャットの最後の音をつなげつつ、自然な感じでサビからテーマに戻るわけです。わずか4分の芸術ですが非常に濃く、詰まっているものが多い演奏です。

2曲目 "April in Paris" はピアノを伴って1コーラスを歌い上げ。そのままピアノソロ、そしてクィニシェット、クリフォードとソロが続きます。クリフォードの活躍が素晴らしく、ソロといいボーカルへの絡み方といい、もう一人天才歌手が現れたような印象を与える名演に仕上がっています。

3曲目 "He's My Guy" は小唄色も濃厚な曲。サラがさらりと歌ったあと、レスターにクリソツのテナーに続いて登場するクリフォードのソロが素晴らしい。今生きていればもうすぐ喜寿を迎える歳でしょう。そして彼の生き方からすれば、交通事故にさえ遭わなければ、まだまだ元気に活躍していたかもしれません。マイルスだって彼が健在なら、あんなデカイ顔はできなかったはずです。そんなことさえ考えさせる名ソロです。

4曲目の "Jim" は、節をこねくり回すようになる前のサラによる、典型的なバラード歌唱が聴かれます。ここでも、歌が終わって合奏を合図に入ってくるクリフォードのソロが素晴らしく、涙すら誘うような心のこもったソロを取ります。

5曲目は "You Are Not the Kind"。これまた小唄調のさらっとした曲ですが、冒頭のクリフォードが素晴らしいので聴かされます。テナー、フルートについで再びクリフォードの吹くソロがこれまた凄い。そのムード引き継いでサラも歌詞を乗せつつも自由なフレージングでジャズの醍醐味を感じさせます。

6曲目はビリー・ホリデイによる不滅の歌が残っている "Embraceable You"。私が秘かに思っていることですが、サラがビリーの曲に挑むと、どうしても対抗意識のせいかテクに走るような所がある。この歌も、そこまで低く下げて節を捏ねなくてもいいのに、かなり節を捏ねています。ライナーノーツによると、この曲がこの日のラスト・レコーディングで、ホーン奏者に帰ってもらったあとリズム隊だけをバックにじっくり取り組んだということです。

7曲目 "I'm Glad There Is You" は冒頭のカデンツァのようなサラの歌が素晴らしい。曲はジミー・ドーシーがスイート・スタイルでやっていた頃の曲ですが、サラはこの辺のマージナルな曲を一気にジャズの中心に引っ張って歌いきる能力がありますね。ジ・イン・クラウドにしてもブラジル物にしても、晩年までサラが持っていた資質です。

8曲目はドイツのクルト・ワイルが作曲した "September Song"。実にしっとりと歌うサラの後に、クリフォードがダブル・テンポ・フィーリングで優れたソロを取ります。妙なフルート・ソロを挟んで、ジャズ・フィーリング全開で吹くクリフォードのソロを引き継いで出てくるサラの即興的な節回しが素晴らしい。歌詞まで即興的に変えています。

ラスト曲 "It's Crazy" は、ホーン奏者にとってのラスト曲であったため、ジャムセッション風に各楽器がソロを取っていきますが、クリフォードの格の違いが改めて浮き彫りになる感じですね。

寺島さんのフレーズを借りれば、このアルバムには2人の歌手がいます。サラ・ヴォーンとクリフォード・ブラウンです。この2人の「たぐいなき」名唱を聴くことができるのがこのアルバムです。

Tags: Brown, Clifford · Vaughan, Sarah · vocal

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