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Miles Davis: Bag's Groove (Prestige) | jazz.info

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"Louis Armstrong, Charlie Parker." (Miles Davis summarizing the history of jazz)

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Miles Davis: Bag's Groove (Prestige)

September 29th, 2007 · No Comments

Bags Groove

「バグス・グルーヴ」という、シンプルさがとりえの何の変哲もないFのブルースが、今日も明日もどこかのセッションの口開けブルースで演奏され、洛陽の紙価を高めたのはおそらくこのアルバムの演奏によるものでしょう。まあ、「洛陽の紙価を高める」というフレーズを一度は使ってみたくて、敢えてこんなことを言い出したのですが、実際この曲のアドリブで聴かれるマイルスのアドリブこそ、一度はどこかで使ってみたいようなフレーズに溢れています。もしこの演奏なかりせば、「バグス・グルーヴ」はMJQのレパートリーのブルースの一つで終わってしまったでしょう。

アルバム『バグス・グルーヴ』は1954年12月24日のクリスマス・イブに吹き込まれたことから、「マイルスのクリスマス・セッション」と呼ばれる歴史的に有名なセッションが含まれたアルバムで、『マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダンジャズ・ジャイアンツ』という長々しく禍々しい名前のアルバムと対になっています。この2枚のアルバムに収められた「クリスマスセッション」が有名な理由は、これが「ケンカ・セッション」であったという口裂け女も真っ青の都市伝説に基づいています。つまり、「俺のバックでピアノを弾くな!」といつもの通り居丈高に言ったマイルスにカチンと来たモンクが、文句を言わずに「ザ・マン・アイ・ラブ」(『モダンジャズ・ジャイアンツ』に収録)で弾くのを止めてしまい、焦ったリズムセクションのざわめきや「早く弾けぇー」と命ずるマイルスのペットが入っているという伝説です。近年、マイルスの自伝が出版されたりしてこれが文字通り「伝説」で事実と違うことは明らかとなりました。しかし、サッチモが歌詞の紙を落としたからスキャットが生まれたという伝説と同じで、これは「喧嘩セッション」のほうが納まりがよいような気がします。モノゴトはこれ「詩と真実」ですから。クリスマス・セッションのメンバーはマイルス(tp)、ミルト・ジャクソン(vib)、セロニアス・モンク(p)、パーシー・ヒース(b)、ケニー・クラーク(ds)です。

都市伝説の視点で言うと、本作『バグス・グルーヴ』の1曲目でタイトル曲の「バグス・グルーヴ」(take 1)は、喧嘩こそ発生していないものの、マイルスとモンクの確執による異常に高いテンションの中生まれたたぐい稀なる名作ということになりますが、その視点を取り去ってもこれは実に深い味のある名作です。まずマイルスと作曲者のミルト・ジャクソン(vib)がユニゾンでテーマを奏でます。その後に出てくるマイルスの抑制されたブルース・プレイ。ラインの狙いというかフレージングは『ウォーキン』に聴くブルース・プレイと同じですが、『ウォーキン』に比べると格段に抑制的で「少ない音符で最大の効果」を発揮するマイルスの特徴が見えはじめています。

続くミルトのソロは、作曲者ということを差し引いても絢爛たるソロで、絢爛過ぎてこれがヴァイブでなく管楽器だったら、かなり粘っこいフレージングになっていることでしょう。クールなヴァイブの音色だからこそ成り立つような、絢爛たるブルースです。

モンクのソロは、ドイツ人批評家ヨアヒム・ベーレンが「歴史上もっとも構成力を持ったソロ」と言ったそうですが、ドイツ人が「構造的だ」などという場合は、たいてい「スイングしていない」の言いかえではないのですかね? 8) 前のフレーズが後のフレーズに論理的に発展していくということなのかも知れませんが、モンクの特色は強く出たソロではあります。

再び出るマイルスのソロがまた素晴らしい。一体何度この演奏を聴き返したことでしょう。マイルスの以前の記事でも書いたと思いますが、マイルスの場合、ソロが一巡してもう一回取るアドリブが凄くよい。抑えたマイルス→絢爛たるミルト→奇妙なモンク、と来て再びソロを取ったマイルスが、短い小節数の中で起承転結を考えた素晴らしいソロを取ります。

2曲目は、同じ「バグス・グルーヴ」のテイク2。1曲目よりも緊張感が欠けているのですが、マイルスのアドリブを聴くと面白いことが分かります。それは、マイルスという人は大きなラインを予め描いておいてそれに沿ってアドリブを展開する人だった。したがって、テイク1も2もアドリブ全体の構成は似通っていて、各部のフレージングにいくらかの違いがあるということです。ミルトのソロはこちらのほうがさらにタメが効いて粘っこくなっていますが、大きなラインは似ています。モンクはテイク1とは全く違ったアプローチで弾いていてストライド・ピアノなども繰り出していて、私としてはこちらのソロのほうが好きです。

3曲目からは54年の6月29日のセッションに変わります。メンバーはモンクがホレス・シルバーになった他、ロリンズが加わります。こちらのセッションも名手ぞろいなので手堅い演奏になっています。"Airegin", "Oleo", "Doxy" はどれもロリンズの曲で、いずれもいわゆるジャズ曲(ジャズ・スタンダード)になって現在でもよく演奏される曲ですが、ここにその原点があります。

5曲目、7曲目に2つのテイクを配するスタンダードの "But Not for Me" はチェット・ベイカーの歌が有名ですが、それぞれテンポを変えて全く違うアプローチをしているところに興味を惹かれます。この曲の解釈としてはどちらも極めつけ。必聴です。

喧嘩セッションという伝説はしょせん都市伝説ですが、このセッションもまた伝説的なセッションということができます。

Tags: Davis, Miles · Jackson, Milt · Monk, Thelonious · Rollins, Sonny · Silver, Horace · trumpet

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