jazz.info

"Louis Armstrong, Charlie Parker." (Miles Davis summarizing the history of jazz)

jazz.info header image 2

Jackie McLean: Swing, Swang, Swingin' (Blue Note)

September 11th, 2007 · No Comments

Swing Swang Swingin

ジャッキー・マクリーンはいつもピッチが怪しく、そこが魅力といえば魅力だったのに、晩年に固め打ちで出してきた新作ではピッチが正しくなっていて驚きました。サックスの師匠に訳を伺うと、アンブシュアを矯正したとの答え。サックス教室の生徒ならまず最初にやるアンブシュアの矯正を晩年までして事なかったということに驚きました。もっとも、マクリーンはなんとなくいつまでも少年のイメージが強く、マイルスの『自伝』を読んでも、いつも泣いているか、悄気ているか、拗ねているんじゃないかと思えるほど。そんな彼だから、晩年にやっとアンブシュアを矯正したというのも微笑ましいエピソードではあります。しかし、例えばプレスティッジの『4, 5, & 6』などピッチがずれ過ぎて「ワンワン」という唸りが発生するところがあって聴いていて辛いです。

今回紹介する『スイング・スワング・スインギン』でもピッチの怪しさは満載ですが、聴いていて辛いというほどではありません(当然ですが)。このアルバムは1959年自己名義でブルーノートに吹き込んだ3回のセッションのうち最後のもので、初めてのワン・ホーン物です。リズム陣はウォルター・ビショップ(p)、ジミー・ギャリソン(b)、アート・テイラー(ds)。最後のオリジナル曲を除いてはスタンダードとジャズ曲で構成されていることも特筆すべき点です。

1曲目は "What's New"。後にコルトレーンが『バラード』の中でしんねりむっつりとやりますが、マクリーンは対照的にハキハキと気持ちのよい演奏をしています。冒頭で一瞬レベルがオフった感じになりますが、おそらく録音の問題でしょう。テーマからソロに入り1コーラスやった後、ウォルター・ビショップのソロもよく歌っています。マクリーンの後ソロは冒頭でパーカーの手癖フレーズを出したり、ファナティックに上がった後タメながら下がっていく例のマクリーン節を全開にして盛り上がっています。このアルバムを象徴するような名演です。

2曲目 "Let's Face the Music and Dance" はアービング・バーリンの曲で、歌ではナット・キング・コールが有名です。マイナーから入っていってメジャーに抜けていく曲想で、マクリーンは速めのテンポでマイナーに傾いた感じのソロを取っています。ウォールターのソロもバドのフレーズを引用したりして乗りに乗っています。時計を逆回ししてパーカーのヴァーヴ時代に戻ったかのようです。

3曲目 "Stablemates" はベニー・ゴルソンの曲で、ジャズ曲としてはスタンダードの地位を得たともいえる名曲です。マイナーで哀愁に満ちた曲がマクリーンにぴったりで名演となっています。

4曲目の "I Remember You"。パーカーが「コンファメ・セッション」で吹き込んだワン・ホーンにもある曲で、パーカーに対するオマージュとなっています。テーマなどなんの衒いもなくパーカー風に吹ききっているところなんかむしろ潔くて素晴らしい。

5曲目はコール・ポーターの "I Love You"。6曲目はオスカー・ハマースタイン二世の "I'll Take Romance"。どちらも張り切った演奏が聴けます。

最後の "116th and Lenox" だけがオリジナルですがブルースです。116丁目レノックス街とはハーレムの街の名前で、マクリーンが生まれ育った街のことだそうです。

マクリーンど真ん中の名盤です。最近日本盤CDが再発されました。

Tags: alto sax · McLean, Jackie

0 responses so far ↓

  • There are no comments yet...Kick things off by filling out the form below.

Leave a Comment