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"Louis Armstrong, Charlie Parker." (Miles Davis summarizing the history of jazz)

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Charlie Parker: Swedish Schnapps (Verve)

August 31st, 2007 · No Comments

Swedish Schnapps

パーカーを聴くならなにから聴いたらいいかという質問はよく出るものですが、自分の場合を振り返ってみると次のような順番で求めていきました。最初に買ったのはこのブログでも散々触れていますが With Strings。これを買った頃は、途中で出てくるオーボエやハープなんかにも耳を傾けていましたが、それでも徐々にパーカーのラインを聴き取ることができるようになり、"April in Paris", "Summertime", "Just Friends" などを好んで聴いていました。気をよくして次に買ったのが On Dial Vol. 1 です。たぶん帯のフレーズを読んで買ったのでしょう、驚きました。16曲入っていると思って買ったら同じ曲が出てくるわ出てくるわ、そう「別テイク」です。CD時代ならスキップで飛ばしたりプログラム再生できますが、LPだとそうも行きません。ジャズを聴き始めた頃なので訳も分からず、ライナーノーツを読むと「テイクごとにアドリブ・フレーズの全く違うところが驚きだ!」などと書いてあるわけですが、こっちとしては「3曲も同じ曲が続くところが驚きだ!」なわけです。「途中で切られた曲が出てくるのはもっと驚きだ!」なわけです。

おまけに連続攻撃が終わって、1曲ずつ違う曲が入っていると思い安心したら、これが「ラバーマン・セッション」。聴いていて「え゛ーっ!」となります。なんか陰鬱で辛そうな演奏が4曲も続いているのですから。今の耳で聴けば、パーカーが何をやっているのか、テイクごとにどう違ってどう優れているのか、「ラバーマン・セッション」がどれほど天才の不思議さを伝えているのか、などなど理解できるわけですが、当時としてはさっぱり、「意味わかんねぇ」とはこのことでした。「変なレコード掴んじゃったなぁ」というのが正直な感想です。

次に買ったのが今日紹介する Swedish Schnapps でした。油井先生が「ヴァーヴのバードはダメだと言うが、『スウェディッシュ・シュナップス』や『ナウズ・ザ・タイム』を聴いてみたまえ。素晴らしいから」と何かで書いていたので買い求めたわけです。本当は「ヴァーヴのバードはダメだ」と言われていることすら知らなかったのですけれどね。

このアルバムはブルースが多く吹き込まれている点と、マイルス入りのセッションが聞ける点が特色です。

1曲目 "Si Si" はFのブルース。ソロ1コーラス目のGm7-C7のところで、典型的なパーカーの節回しが炸裂します。2,3曲目の "Swedish Schnapps" はB♭循環。3曲目(別テイク)のサビの部分で優れたアドリブが聴けます。ジョン・ルイス(p)も味のあるソロを取っています。4,5曲目 "Back Home Blues" はCのブルース。ここでも1コーラス目のトゥーファイブで入念な節が聴けます。パーカーのソロは5曲目(別テイク)のほうがよいような気もしますが、ちょこっととちっているのでお蔵入りされたのでしょう。6曲目の "Lover Man" は、あの「ラバーマン・セッション」から5年。今回は見違えるようによくなったかというと、不思議なものでなんとなくぎこちない。エンディングはパーカーがたまにやるクラシック音楽のパロディーです。

7曲目はCDだと "Blues for Alice" ですが、LPではB面1曲目の "Au Privave" でした。CDで7曲目に来たのは、この曲が上の6曲と同じ51年8月8日のセッションだからで、正しい順番に戻したといえるでしょう。 "Blues for Alice" はFのブルースで、パーカーの中では比較的遅めの160です。これは "Billie's Bounce" と同じぐらいなので、B♭7のところで上のルートから下のルートまでダラララと落ちていく、典型的な手癖フレーズが出ています。

8,9曲目が "Au Privave" でFのブルースです。ここから51年1月17日のマイルス入りのセッション。これも名作でマイルスもなかなか張り切ったソロをとっています。10,11曲目の "She Rote" は「アウト・オブ・ノーウェア」のコードを使ったオリジナル。ミュートのマイルスが優れています。若きマイルスの代表的なミュートソロといえます。

12曲目の "K.C. Blues" はかなりゆっくりとレイドバックした感じのCのブルース。K.C.とは「カンザスシティー」のこと。マイルスのぎこちないソロを挟んで、パーカーが自由自在にソロを繰り広げます。13曲目 "Star Eyes" はスタンダード。こういうスタンダード曲のテーマ解釈は、まさに「ウィズ・ストリングス」を彷彿とさせます。自由に崩しながらテーマを吹いたあと、マイルス、ウォルター・ビショップのソロが続き、再び自由に崩したパーカーによるテーマ演奏が聴けます。

CDだとここに "Segment", "Diverse", "Passport (1 & 2)" が追加されますが、この4曲が共に2ホーン(アルトとペット)のクインテット編成で、これが加わることで「ヴァーヴのクインテットが網羅される」という事情から追加されたわけです。 "Segment" と "Diverse" は同じ曲のテイク違い。逆に "Passport" は1と2になっていますがまったく別の曲で、1がブルース、2は循環です。「別テイク」などと書いているサイトがありましたが、間違いです。

セッションデータはパーカーに加えて、1-7がレッド・ロドニー(tp)、ジョン・ルイス(p)、レイ・ブラウン(b)、ケニー・クラーク(ds)で1951年8月8日、8-13がマイルス(tp)、ウォルター・ビショップ(p)、テディー・コティック(b)、マックス・ローチ(ds)で51年1月17日です。追加曲(14-17)はケニー・ドーハム(tp)、アル・ヘイグ(p)、トミー・ポッター(b)、マックス・ローチ(ds)で、49年5月5日の吹き込みです。

Tags: alto sax · Davis, Miles · Dorham, Kenny · Lewis, John · Parker, Charlie · Roach, Max

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