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Benny Goodman: The Golden Age of Benny Goodman (RCA)

August 31st, 2007 · No Comments

Complete BG

ベニー・グッドマンからジャズに入ったことは以前にも書きましたが、ラジオ番組を通してパーカーやマイルス、コルトレーン、バドらに出会ううちに、「一体ベニー・グッドマンはジャズや否や」という本質論というか唯名論的命題にぶつかるわけです。まじめだったんです 8) グレン・ミラーまで行ってしまうと、「アドリブ」の部分まで全部同じ(書き譜)なので、「これはジャズではないな」と言えるのですが、ベニーの場合は微妙。そこで昭和の高校生として一大決心をして、近く来日するベニー・グッドマンを聴きに行き、同時にRCA全集を購入して聴き倒すと決めたわけです。そうなると軍資金が必要になり、近所の中学生に英語を教えて小遣いを稼ぐかたわら、中華料理屋でアルバイトをはじめました。ところがこの中華料理屋の職場環境が劣悪なことこの上ない。仕事で一番つらいのは業務のハードさではなく、人間関係が悪い時ということは今になれば常識ですが、この人間関係がよくなかった。とにかくみんな仲が悪く、コック同士がいがみ合うことしばしば。一人のコックが帽子を床に叩きつけて出て行ってしまい、仕方なしに私が餃子を焼いたり、青椒肉絲を炒めて出したこともありました。免状を持っていない私が料理を作るなんて違反だと思うんですが、料理は楽しいものの、人間関係がこの調子ではインボルブされたあとのことが思いやられ辞めたくなりました。そこでレコード買いは英語バイトの給料を貯めることにして、とにかくベニーのコンサート費用が溜まった頃合を見計らって「辞める」と告げました。因業なオーナーは言を左右にして安く使い叩ける高校生バイトを引き止めましたが、「辞めます、お給料は働いた分だけ貰います」と言い張って辞めました。

そんな苦労をして日本武道館で開催されたオーレックス・ジャズ・フェスティバルにベニーを聴きに出かけましたが、これがよくない。変なコーラス娘を連れてきたりしてシャリコマだし、コンボ演奏でテディー・ウィルソンとミルトン・ヒントンが張り切るものの、ベニーと意思疎通が出来てなくて別のセッションを同時にやっているよう。むしろおまけのように考えていた、ベニー・カーターやハリー・スイーツ・エディソン達のセッションのほうがずっとよかった。いや、かなりよくてこちらはライブ盤も買い求めました。

ということでベニーはやっぱりジャズではないんじゃないかと思い、RCAの全集も買わずにおこうと思いましたが、「まあ、今はジャズでないにしても、全盛時代はジャズだったのかもしれない」と思い直し、働いたお金で買ったのが写真のボックス・セット(9,000円)です。オーケストラの代表的名演とスモール・コンボの全演奏を収録した6枚組みです。いやぁ、聴き倒しましたよ。親から「耳につく」と苦情が来るまで聴きました。その結果出した結論は、1)バンドが素晴らしいのはスター・ソロイストと、2)フレッチャー・ヘンダーソン楽団のアレンジと、3)ジーン・クルーパー(ds)のおかげであり、4)コンボ演奏はベニー含めてみんな凄いということでした。というわけで子供G坂ジャズ検定に合格したわけです。

特にスモール・コンボはモダン・ジャズ的な耳でかなり批判的に聴き込みましたが、それでも凄さに変わりはない。ライオネル・ハンプトンが加わった吹込みから「ジャズ度」がグンとアップするところも面白いです。このレコードには入っていませんがチャーリー・クリスチャンが入るとさらに「ジャズ度」が高まるのですが、その頃には残念なことにジーン・クルーパが抜けています。

さてジーン・クルーパがとびきり優れているのは1937年2月3日のセッションです。この日のジーンは神がかっています。スイング史上最高のスモール・コンボのドラマーに神が舞い降りたのですから、このセッションがスイング時代最高のセッションといっても過言ではありませんが、まあレスターの「レディー・ビ・グッド」セッションのほうが上ですね。しかし、この日のセッション、曲としては "Ida, Sweet as Apple Cider", "Tea for Two", "Running Wild"の3曲が凄い。ジーンが凄いので当然全員凄くなるわけです。モダン・ドラムとは趣向が違いますが、アート・ブレーキーにも匹敵する繊細さと潔さで歌うリズムを叩き出しています。必聴曲です。

ベニーRCA時代の選集はCD時代になっても数多く編まれていますが、上の3曲が入ったものを下に挙げておきます。現在は入手不可ですがサンプルが聴けます。

Tags: big band · Goodman, Benny

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