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Bud Powell: Bud Powell (Roost)

August 10th, 2007 · No Comments

Bud Powell Trio

レコーディングのせいか、それともリマスターやプレスのせいか、音の薄いレコード・CDというものがあります。特にアナログ時代は廉価盤や輸入盤の中に音の薄いものが多く、私の購入した範囲でも『カインド・オブ・ブルー』、『クールの誕生』、『マッセイホール』などジャズ史的に重要なものが含まれていて、聴いてもピンとこなかった記憶があります。CDに代わっていった当初もアナログそのまま、いやアナログよりも更に音が薄まったものなどが出されていてCDに対する懐疑を助長していました。現在では国内盤は言うに及ばず輸入盤でも音質に配慮したリマスターが主流となっているので、こうした心配は減っていますね。

今回紹介する Bud Powell (バド・パウエルの『バド・パウエル』ではあんまりなので、邦題では『バド・パウエルの芸術』となっています』)も、廉価アナログ盤で購入した時はあまりに音が薄くて遠く、数回聴いて飽きました。その後CD時代が来て、「それっ!」とばかりに買って聴いてみたけれどやっぱり音が薄くてがっかり。仕方がないのでアンプやスピーカーを買い、音量を上げて聴き、それでもダメな分はイマジネーションで補うようにしました。しかしながら現在出ている国内盤の中にはかなり音質にこだわったヴァージョンもあるので、このCDを買う場合は何ビットとか何キロヘルツなどとやかましく書かれた音質重視盤を求めたほうがいいかもしれません。

わが国でこのレコードが紹介される時に必ず引用されるのが、栗村政昭氏の「芸術的香気漂うバド・パウエルの最高傑作」、「モダン・ジャズ・ピアノのバイブルとされてよい至高の名演」というフレーズです。これは前半(A面)8曲について言われたもので、バド、マックス・ローチ(ds)、カーリー・ラッセル(b)のトリオによる1947年1月10日のこのセッションは神がかっています。 "I'll Remenber April" や "Indiana" はただただものすごい気迫で、「インディアナ」などテンポが速い(一説には320以上出ているといわれています)のでほとんど「ドナ・リー」状態(「ドナ・リー」の元歌が「インディアナ」)です 🙂 また "Somebody Loves Me" のくつろいだ魅力、"I Should Care" の原曲を超えた美しいバラード解釈。5曲目の "Bud's Bubble" はオリジナル曲、6曲目"Off Minor" はモンクの曲で、これまた名演。7, 8曲目の "Nice Work If You Can Het It", "Everything Happens to Me" はどちらもスタンダード。前者をチョッパヤ、後者をバラードとして演奏しています。

B面は1953年9月の吹き込みでジョージ・デュヴィヴィエ(b)、アート・テイラー(ds)とのトリオ。A面との間に横たわる6年間で、彼は精神病院への入院、麻薬常習の疑いによる逮捕と発狂、そして電気ショック療法と、繊細な芸術家にとって過酷ともいえる運命の連続を経験しました。その結果目くるめくテクニックは消えうせ、それを歌心でカバーするような感じになります。いわゆる後期のバドです。私は後期のバドも好きで、一連のヴァーヴ物とかゴールデン・サークルなども聞いていますが、それらに比べればずいぶんと前期の後期です(なんのこっちゃ?)ただ、13曲目のブルース "Bug's Groove" などは鬼気迫る演奏で、右手のメロディーと左手のコンピングがまったく別の展開をイメージしながら弾いているようです。14,15曲目のバラード2曲も後期の特徴が強くて、タッチの強弱が激しく、時に不安定な感じをかもし出しているところがやはり後期ですね。

下のCDはおそらく音質重視盤です。しかしもともとが古い録音で、おまけに7曲目なんかは途中で一瞬録音レベルが下がったりしていますからそういうところには目をつぶる「鈍感力」が必要かもしれません 😛

Tags: piano · Powell, Bud · Roach, Max

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