FM東京に「気まぐれ飛行船」という番組がありました。パーソナリティーは作家の片岡義男さんとジャズシンガーの安田南さん。この二人、とにかく声がよい。片岡さんはクールな感じの低音が効いた声で、安田さんはジャズシンガーでものすごいヘビースモーカーという話でしたが、バーのママのように、声だけ聞いたらバーはバーでもゲイバーと間違えたかと思うような、顔を見たらやっぱりゲイバーだった(何のこっちゃ?)というようなハスキーな声ではなくて、とても大人の色気があふれる魅力的な声で、特に「ウフフ」と笑う声など意味深で青少年の心の中に熱いものをたぎらせたわけです。この番組では、二人のパーソナリティーもあって頻繁にジャズを特集し、時には油井先生をゲストに迎えてジャズ談義をしたりしていました。
このアルバムは同番組で放送されて気になっているところに、FM-fanというFM雑誌で片岡さん本人が「心に残る一枚」で紹介されていたのを読み、心に留めておいたものです。実際に手に入れたのはずっと後のことです。同じ欄で湯川れい子さんが『チェット・ベイカー・シングス』を紹介していましたが、これも心に留めておきました。チェットはともかく、ジョニー・スミスを実際に買わなかったのは、以前の記事でも書いたようにジャズ・ギターに偏見を持っていたからです。実際に自分でジャズギターを練習するようになって、ほとんどといっていいほどギター関係のアルバムを持っていないことに気づき、大慌てで記憶を呼び戻して買い求めました。
このアルバムは1952年から53年にまたがる4つのセッションをまとめたもので、分かりやすくいえばジョニー・スミスとリズム陣に3人のテナーメンが客演している形になります。その3人とはスタン・ゲッツ、ズート・シムズ、そしてポール・クィニシェットです。3人ともレスター派のテナー、特にポール・クィニシェットにいたっては、レスターのあだ名「プレズ(大統領)」にちなんで「ヴァイス?プレズ(副大統領)」というあだ名がつけられるほどレスターに心酔していました。レスター派とはすなわちクール派ということで、このセッションはどれもクールな魅力に満ちています。
聴きどころとしては、1曲目 "Where or When" のスムーズでクールの典型といってもいい演奏、2曲目 "Taboo" というジャズにはしにくい曲を見事ジャズ仕上げているところ、また "Cherokee" では見事なバッパーぶりを示しているところなど数多くあります。 さらに "Moonlight in Vermont", "Stars Fell on Alabama", "Tenderly", "Ghost of a Chance", "I'll Be Around", "Yesterdays" 等々バラードが多く、これらが美しく、ジャズギターによるバラード演奏のお手本のように素晴らしい点です。普通ジャズアルバムでは、息抜きとしてバラードが挿入されるのですが、このアルバムではむしろバラード集の中に息抜きとしてアップテンポの曲が挿入されているような印象です。
ジャケットは有名なジャケットデザイナーのバート・ゴールドブラット。名ジャケです。
夜、灯りを落として冷たく冷やしたビールを飲みながら聴くのにうってつけです 🙂
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