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Grant Green: Feelin’ the Spirit (Blue Note)

May 25th, 2006 · No Comments

feelin' the spirit
今ではたまに自分でも弾いたりしていますが、ジャズギターには長い間アレルギーがありました。たぶん、最初に聴いたジョン・マクラフリンがやけに小うるさく感じられたのと、渡辺香津美の狙ったような外し方に理屈っぽさを感じたからだと思います。そこでジャズギター=マージナルのルサンチマン(なんのこっちゃ?)という図式が自分の中で出来上がりずっと敬遠していました。結局チャーリー・クリスチャンを歴史的に聴く以外ほとんどギターを聴くことはなかったのです。

この印象が一変したのはここで取り上げるグラント・グリーンの『フィーリン・ザ・スピリット』を「メグ」で聴いたときのことでした。それまで抱いていたような理屈臭さ、小うるささがない、それどころか反対にきわめて感覚的で単刀直入な演奏に目から鱗が落ちる思いでした。こういうところにもジャズ喫茶の良さがあるのです。自分の好みだけで聴いているとどうしても偏ってしまい、私のようにジャズギターに偏見があったりするとそれだけで聴く機会を失ってしまうものも多い。しかしジャズ喫茶で500円分の元だけは取ろうと長く居座っていると、自然にいろいろなタイプの演奏を耳にすることになり、聴かず嫌いを治すこともできるわけです。『フィーリン・ザ・スピリット』は全曲「黒人霊歌(ニグロスピリチュアル)」で構成されていて、曲自体も単純な構造のものばかりです。そこへもってきてグラント・グリーンのわかりやすいギター。頭よりも、ハートやおなかにくるタイプのジャズです。

一曲目の"Just a Closer Walk with Thee"はニューオリンズ・リバイバルの頃ジョージ・ルイスがよく取り上げていた曲です。ミディアムテンポで軽快にソロを取っていきます。ピアノはハービー・ハンコック。難しいハンコックではなく、カンタロープやウォーターメロンハンコックで弾いています。二曲目はコールマン・ホーキンスの演奏でも有名な"Joshua Fit de Battle of Jericho"。「ジェリコの戦い」という邦題の方がわかりやすいでしょう。ここのイントロはハービーですがそのまま「カンタロープ」突入しそうな感じがしておもしろい。三曲目の"Nobody Knows the Trouble I've Seen"(誰も知らない私の悩み)はサッチモがむかし歌った曲です。ここでの演奏はそのサッチモ版を越えていると思います。イントロからテーマ、アドリブまでずっとギターとピアノの絡み合いで進み、二人のブルース・フィーリングが堪能できます。「メグ」で聴いた折りも、この演奏を聴いて「ユニオンで買って帰ろう」と決意しました。 音使いもシンプルで単純な演奏ですが、ソロを順番に取るのではなくグラントとハービーが同時にソロを取っていて、二人のコラボレーションが際だった名演です。

ギターフリークからは「大したテクニックもない」などと馬鹿にされることも多いグラント・グリーンですが私のお気に入りギタリストです。

この記事で取り上げたCD

Tags: Green, Grant · guitar

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