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Lee Konitz: Very Cool (Verve)

August 3rd, 2007 · No Comments

Very Cool

このアルバムはおそらく一番最初に買ったりー・コニッツです。スイング・ジャーナルのゴールドディスク(GD)に選定されているので目に付いたのでしょう。今聴いてみると、ゴールドディスクというのはちょっと疑問ですが、リー・コニッツのアルバムとしては親しみやすい演奏であり、なおかつまだ閃きを失っていないので、聴いておくべきアルバムといえるでしょう。

メンバーはリー・コニッツ(as)、ドン・フェララ(tp)、サル・モスカ(p)、ピーター・インド(b)、そしてシャドー・ウィルソン(ds)。ドラム以外は皆トリスターノ門下です。レニー・トリスターノはビバップと同じ時期に活躍したピアニストで、ビバップの代理コードの理論は十分理解しつつ、フレージングやリズムにおいてビバップとは全く違う行き方を取ったイノベーターの一人。彼の一派の録音を聴くと、同じ理論に立脚しながらバップとはずいぶん違う演奏に仕上がっているので、ジャズというのは理論ではなくてテイストなんだということがよく分かります。ここを忘れるとオルタードスケールをマスターしたからジャズが出来るとかジャズらしく演奏できるといった、ジャズ研のD年あたりが犯しそうな勘違いをすることになります。このアルバムは、トリスターノ一派としての理論や手法をベースにしながらより「分かりやすくなった」時期のリー・コニッツが聴けます。

1曲目の "Sunflower" はトランペットのドン・フェララの曲。コーラスの構造を無視して切れ目のない、長く起伏に富んだラインというトリスターノ楽派に特徴的なアドリブを聴くことができます。2曲目はバラード "Stairway to the Stars"。同じ白人アルトでもアート・ペッパーのように情緒を絡ませて吹くタイプではないので、コニッツのバラードは淡白そのもの。よくいえば渋い、悪くいえば辛気臭い演奏です。3曲目の "Movin' Around" は、再びフェララの曲でアップテンポの演奏。ここでもコニッツは独自の語法で演奏していますが、フェララ、モスカのソロも同じ気分を共有しているのでまとまりのある演奏になっています。

4曲目 "Kary's Trance" は、ジャック・ロレンスの "Play Fiddle Play" のコードを使ったコニッツのオリジナルで、『インサイド・ハイファイ』というアルバムでも演奏しています。後半でコニッツとフェララによる4バース・チェンジが聴けます。"Crazy, She Calls Me" は再びバラード。ペット抜きのワンホーンでやはり渋くやっています。

最後の曲 "Billie's Bounce" は、パーカーのブルース。トリスターノ派はパーカーに影響を受けないように、できるだけ彼の演奏や曲とは距離を置いていたといわれますが、ここで取り上げているということは、もはやコニッツがそういう師の教条を守らなくなったことが窺えるわけです。この演奏の面白いところはトリスターノ派の演奏とパーカーの引力との間で引き裂かれそうなコニッツで、長くうねるラインと4小節や8小節ごとにピリオドを打っていくようなバップのスタイルが混在していることです。フェララのほうはもっと開き直っていて、バップそのもののフレーズを表に出して吹いています。モスカはぎこちない。そして最後にパーカーが『サヴォイセッション』で吹いたアドリブラインをそのままコピーして、アルトとペットのユニゾンで吹いています。『トランキリティー』では、"When You Are Smiling" で同じようにビリー・ホリデイとやったときのレスターのアドリブをコピーしてアルトとギターのユニゾンで演奏していますが、「あっ!出たっ!」という感じになって印象に残りますね。

コニッツというと『サブコンシャス・リー』で、これはとてつもない名盤なんですが、けっこう難解というか元曲をよく知っていて、それをバップだとどう料理するかまで知っていると、初めて楽しめる作品です。それに比べて『ヴェリー・クール』は、渋いには渋いけれど、もっと親しみやすくてコニッツの特徴もよく分かるアルバムになっています。ただし、あまりクールではない(not very cool)ですよ。涼みたい人はボッサ・ゲッツのほうがよいでしょう 🙂

Tags: alto sax · Konitz, Lee

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