ぐぅ~む・・・・・このジャケット、パーマ当て損なった男ですよね?レーベルはパブロといってノーマン・グランツという、ジャズ史上二番目ぐらいにエライプロデューサーが設立したレーベルなのですが、ここのジャケットはあまりに散文的すぎて、しばしば糾弾の的となっています。
私がこのアルバムを知ったのは中学2年生。こどもの頃です。当時買っていた(買ってもらっていた)ジャズ雑誌があって、そこに新譜として載っていました。アルバムを買うお金なんてない中学生のこと、いろいろなジャズ番組をFMで狙い聴いているうちに出会いました。うーーむ、いい男性ボーカル・・・・・・・サラ・ボーンが女性だと知ったのはそれからかなり後のことです。やはりFMラジオでサラを紹介しながら「彼女」と言っているのを聞き咎めて、やっと女性だと気づきました。それまではジャケットとヴォイスの印象でずっと男だと思っていたわけです。
おそらく印象的に言って「ジャズボーカルの典型」といえばサラ・ボーンだと思います。このアルバムはサラとしては後期の「パブロシリーズ」の一枚です。このほか、「枯葉」「ウィズ・カウントベイシーバンド」「デューク・ソングブック」「コパカパーナ」などがありますが、このシリーズの最高傑作はこの一枚です。
一曲目"I've Got the World on a String"。もうこの一曲で十分です。サラの歌は自由自在にリズムを伸縮していきます。声は私に男だと思わせた低音も豊かに高音まで少しもひっかかることなく続いてゆきます。さらに驚くべきはバック。オスカー・ピーターソン、ジョー・パス、レイ・ブラウン、ルイ・ベルソンが綺羅星のごとく並びすごいソロを取っていくところも聞き逃せません。
3曲目の表題曲"How Long Has This Been Going on?"はラテン調にアレンジされていますがサラは軽快に歌っています。5曲目の"Easy Living"は私のもっとも好きな曲の一つですが、そのイメージはビリー・ホリデーの歌にあるわけです。一方、サラはビリーとは全く違うアプローチでこの歌に挑んで成功しています。7曲目の"My Old Flame"もビリーの歌で有名ですが、ここでのサラはもてるテクニックを全てつぎ込んで歌っています。テノール歌手並といわれる自慢の低音からファルセットまで駆使して捏ねに捏ねていますが、ちょっと押しつけがましいというか、後期サラボーンのよくないところ、すなわちテクニックが全面に出過ぎてちょっとやりすぎてしまう欠点が出ています。最初は驚くんですけれどね。
サラ・ボーンはどこからはじめてもいいジャズ・シンガーですが、もし最初に聴く一枚ということであれば、これをお勧めします。彼女の歌い方こそ「ろいく」のイデアであり、なかなか出せないフィーリングなのです。
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