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Billie Holiday: Lady Day (Columbia)

May 24th, 2006 · No Comments

lady day
ビリー・ホリデイはいろいろと面倒です。時代によってかなりスタイルが違っているだけでなく声質も相当変化していて、あるアルバムを薦めたからといって、それが薦められた当人のツボとマッチしていないと、後で「どうだった?」と訊いても曖昧な返事しかもらえないわけです。とりわけ、リズムと声質というのは生理的な好き嫌いに支配される傾向が強く、好きになればとことん好きになるのですが、一度嫌悪感をもってしまうとそれを払拭することはなかなか難しいものです。

ビリー・ホリデイは大きく分けて三期あり、声もバックのスタイル(特にリズム関係)も大きく異なります。第一期は「ブランスウィック・セッション時代」で、彼女はセッションの一員として歌っています。個人的にはこの時期が一番好きなのですが、声は若々しいもののリズム周りがちょっと古めかしい。第二期は名盤「コモドア・セッション」とラバーマンを含む「デッカ時代」が来ます。この時期は「トーチソング」といって身も焦がすような恋愛の歌がメインで、バックもビッグバンドやストリングスなど分厚く、個人的には「ちょっとドロドロして重たいサウンドだな」という印象の録音が多いと思います。つづいて第三期はノーマン・グランツのもとで新境地を拓いた「ヴァーヴ時代」。バックの編成が第一期と同じようにスモール・コンボに戻り、リズムも新しく聞き易い録音が多い時代です。そしてそのラストに真のビリーファンしか聴かない方がいい「レディー・イン・サテン」と「ラスト・レコーディング」が来ます。

という面倒な歌手なのですが、このDVDを観れば一発でスタイルの変遷と合わせて彼女の人生がたどれます。カーメン・マクレエやアニー・ロスといった歌手仲間、ハリー・スイーツ・エディソン、バック・クレイトンらベイシーバンド時代の同僚のインタビューを中心に構成されています。映像も垂涎ものが多く、彼女の映像は当然のことサッチモとの共演映画、「動く」伝説のベッシー・スミス、レスター・ヤングなど多数収録されています。とりわけうれしいのは「"ファイン・アンド・メロー"セッション」がフルに収録されている点で、彼女の歌の合間を縫ってベン・ウェブスターが、レスターが、ロイ・エルドリッジがソロを取っていきます。ソロは取らないもののコールマン・ホーキンスや若き日のジェリー・マリガンも写っています。仲間がソロを取っているときのビリーの表情、カメラが彼女の背中をかすめたらしく「キャッ」という感じで笑う表情、そして歌う表情。これらが余すところなく舐めるように映像化されている貴重なフィルムです。

ビリー・ホリデイを最初に聴く(観る)ならこれ。音と文字情報(悲惨な人生の伝記)だけでイメージを作りあげてしまった人も、この映像を見れば印象がひっくり返るはずです。

この記事で取り上げたDVD

Tags: Holiday, Billie · vocal

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