このアルバムは『プレイズ・フォー・バード』というタイトル通りA面はパーカーメドレーとなっていますが、何度聴いても一番心に訴えてくるのはB面の"i've grown accustomed to her face"です。『ウェイ・アウト・ウェスト』の"solitude"もかなしいし、『ジャズに恋して』の"tennessee waltz"なんか同曲の最高傑作だと思うけれど、この曲が一番切々としている。そこでちょっと調べてみたら、この録音はクリフォードが事故死した三ヶ月後の録音なんですね。ご存知のように、ロリンズとクリフォードは同じバンドで演奏していました。だからクリフォードの死はロリンズにとって相当のショックだった。そこで実はこの曲、クリフォードへの哀悼を示す演奏なのではないだろうかと推察できるわけです。
問題はこの曲のタイトル・・・邦題は『あの子の顔に慣れてきた』・・・これはいくらなんでも無茶です(笑)「ブスは三日で慣れる」って歌詞じゃありません。知っている人も多いと思いますが、これはヒギンズ教授がイライザに去られた後の歌で「君の顔に馴染んだのに今は見れなくて寂しい」という思いの歌なんですよ。むしろ「君の顔が忘れられなくて」とか、「君の影を慕いて」(って古賀政男か!?)といった邦題のほうがふさわしい気がします。そうすると、やはりこの曲の演奏は亡きクリフォードに捧げたものだという推察もあながち間違っていないんではないかと思え、ますますこの演奏が好きになるのです。
ちなみに、これも有名な話ですが"you'd be so nice to come home to"の表題「帰ってくれると嬉しいわ」も間違いですよね。理屈はこうなります。
This car is easy to drive.→It is easy to drive this car.
You'd be so nice to come home to.→It would be so nice to come home to you.
英語では漠然といってから、具体的にいう事が多いからまず「帰宅する(come home)」といって「あなたの元へ(to you)」と具体的に述べるわけですね。したがって、この曲は「あなたの待つ家に帰れたらどんなに素敵だろう」という感じのタイトルなわけです。
この記事で取り上げたCD
0 responses so far ↓
There are no comments yet...Kick things off by filling out the form below.
Leave a Comment