ドラマーやベーシストは、普段メロディアスなフレーズを繰り出せないせいか、作曲となるとホーン奏者やピアニストよりも美しい曲を書きたくなるのかもしれません。
Tony WilliamsのForeign Intrigueは全編ドラマーでリーダーのTonyの作曲したナンバーで構成されていますが、まさに美曲の宝庫です。このアルバムはLPで持っていて、手に入れた経緯については以前ブログ日記に書きましたが、現在のところ廃盤状態でジャケットのリンク先のamazonでもユーズド¥43,800なんていうふざけた値段で売られています。
A面1曲目はタイトルチューンの"Foreign Intrigue"。冒頭にドラムソロがありますが、後はボビー・ハッチャーソンのバイブ、ウォレス・ルーニーのトランペット、ドナルド・ハリソンのアルト、マルグリュー・ミラーのピアノとソロを回していく一般的なジャズ演奏です。しかし、リーダー作とはいえ、バックで煽るトニーの凄いこと。勢いのある演奏です。
2曲目"My Michele"は少し速めのバラードですが、アンサンブルにハービー・ハンコックの影響か感じられて、とても軽やかで綺麗な曲になっています。
3曲目は"Life of the Party"。これはラテンのリズムを取り入れたエキゾチックな演奏で、BNの4000番台に結構ありそうな曲です。このバックでも煽りに煽っていますが、それに対してウォレス・ルーニーのソロにはclarity(明晰性)があってよく出来ていると思います。
ジャズ喫茶の中には非常に頑固な店があって、寺島さんのMegや大西さんの今は無きA&Fでは、あるアルバムのA面が聴きたくてリクエストしても、オヤジさんが「このアルバムの真価はB面にあり!」と思っていれば、B面しかかけてもらえないわけです。CDになって、どうやっているんだろうと思い、A&Fで一度CDを見せてもらいましたが、ジャケットにマジックで「かけるべき曲」の星印が打たれており、レコード時代のようにA面B面どころの騒ぎではなく、CDは曲がスキップできるという利点を生かして「1,3,4,6曲目、以上!」みたいな調子で決められていたようです(笑)。しかし、オヤジさんたちのこだわりも分からないわけではなく、例えばこのLPはB面に断然その真価が現れていると思えるのです。
B面1曲目は"Takin' My Time"。ブルージーでファンキーな曲想ですが、先発のドナルド・ハリソンのソロに味があっていい。これを聴きながら、「うーむ、ショーターのソロで聴いてみたいなぁ」と思いました。しかしいい曲です。
2曲目は"Clearways"。現代4ビートのお手本のような曲で、お手本のような演奏が施されています。特にピアノがいいと思います。
3曲目"Sisiter Cheryl"は、このアルバムの白眉であるばかりでなく、ハービーの"Chan's Song"などと並んで現代4ビートのスタンダードになれる美しさを持った曲です。このアレンジにもハービーの影響が感じられますが、マルグリュー・ミラーのピアノソロも4ビートをやるときのハービー風です。ボビハチのソロも透明感があるので、『処女航海』のコンセプトを発展させ、延長した演奏であるということが良く分かります。
ラスト4曲目の"Arboretum"(森林公園)は全員でソロを回していくバップスタイルですが、みんな威勢よくやっています。
しかし、こういう名盤がどうして再発されないのでしょうね。新生BNだから東芝EMIが持っていると思うので、普通ならすぐにでも再発しそうですが、権利関係がややこしいのかもしれません。
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