盲目のピアニストアート・テイタムは超弩級のテクニシャンで天才なのですが、いまひとつ人気がありません。その理由は多くの人が気づいているように「うるさい」んですね。上手いんだけれどのべつ幕なしに「コロコロコロコロ」やられると耳につく。音楽で「耳につく」なんていうのは最悪なことなんですが、それでも耳について仕方がない。さらに、テイタムのソロ集などは大体が3分前後の演奏で、どの曲も同じように珠を転がしているので単調な感じがする。同じバカテクでもオスカー・ピーターソンが、そのバリエーションの豊かさから高い人気を得ているのに対して、アート・テイタムがいまひとつ人気がないのは、そういうわけだと思います。
それにしても、アニタ・オデイが "You're the Top" の中で歌詞をアドリブし、素晴らしいものの引き合いに "Tatum's left hand" (テイタムの左手)と歌っているように、実際目の前で展開されたら魂消るような上手さであることには変わりありません。ソロ集だと単調に流れる憾みがあるので、今回はホーン入りの名盤を紹介します。
メンバーはテイタム(p)、ベン・ウェブスター(ts)、レッド・カレンダー(b)、ビル・ダグラス(ds)で、録音は1956年9月11日。
1曲目は "Gone with the Wind" 。エラがベルリンで歌った名唱が残されていますが、それに匹敵するような名演です。イントロからテーマまでテイタムが弾ききっていますが、それにしても手数の多いこと 🙂 せわしない感じすらしますが、その後に出てくるベンの悠揚迫らざるテナーと良い対比をなしています。この1曲目でこのセッションが成功していることは分かります、
2曲目の "All the Things You Are" はバップの聖典ですが、二人にはそんなこと無関係。「名バラッド」としてアプローチしています。ベンの深い音の背後でコンピングをつけるテイタムはしかし、コンピングという範疇を超えています。つまり出しゃばりすぎなわけです。ホーンと一緒になってアドリブしているわけですが、それがインタープレイに昇華されずに、同時に色んなことやっているという風情を醸し出しています。ビリー・ホリデイがらみのエピソードで「ベンは非常に短気だった」というのを聞いたことがありますが、この時彼は怒り出さなかったのかしら?あるいは「俺のバックでピアノを弾くな」とマイルスばりの発言はなかったのでしょうか?しかし、いずれにせよ56年という段階で、この曲を「ありきたりのバップ」にしていないところは凄いです。
"Have You Met Miss Jones" は邦題「ジョーンズ嬢に会ったかい?」は、テイタムを尊敬するピアニストオスカーPが、人気盤『プリーズ・リクエスト』で吹き込んでいますが、ここでの演奏はぐっとテンポを落としてゆったりとしたバラードに仕上げています。それにしてもベンのテナーの音色は実に豊かです。サブトーンが満遍なくいきわたっていて「これぞテナー」という音色。テイタムはやはりバックで手数多くやっていますが、この頃になると、「このアルバムはこういうもの」という気分に切り替わって、楽しく聞けます。
4曲目の "My One and Only Love" といえばコルトレーンとハートマンを思い出しますが、彼ら二人もわりとストレートにやっているせいか、この演奏とかぶります。もちろんハートマンがベンで、コルトレーンが後ろでうるさいテイタムの役です。かなり長いテイタムのソロがフィーチャーされた後ベンに受け渡されますが、二人とも全トラック中最高の出来を示していると思います。
5曲目 "Night and Day" にいたってやっとテンポが上がります。テーマのテイタムはストライド+テイタムという世にも恐ろしい展開になっています。ハイ・テンポだとベンも吹き荒ぶ傾向があって困りものなのですが、これはちょっと速いといった程度なので荒まずに吹いています。
6曲目の "My Ideal" は再びバラード。ここでのベンのソロは聴きもので、レイドバックしてブルージーな、実にくつろいだソロを取っています。テイタムはテイタムでテイタム満開の上昇下降を繰り返す「コロコロ」ソロから、一転ブルース・フィーリング豊かなソロに転じます。左手が走っているのは相変わらずですが。これは味わい深い。レコードでいう「B面2曲目」のジンクスがここでも発揮されています。
ラストが "Where or When"。テーマはテイタム。テーマの旋律を凌駕するような感じで左手が走りまくっています。もう、一人オーケストラ状態です。何ていう曲か忘れそうです。ということでベンが再びテーマのメロディーをしっかり吹きなおしています。
CDではこの後別テイクが3曲収められています。
いろいろ書きましたが、名盤ですよ。テイタムはソロだとベースやドラムも一人で受け持って、おまけに受け持てるだけの技量があるので時にうるさく感じますが、それでも一聴しただけで、ここまで強烈な個性を感じさせるピアニストは少数です。この辺の、強烈で傲慢なまでの個性というのが当時のジャズ界に見られるバイタリティーの源泉なのかもしれません。いまの人たちなら、それだけのテクがあっても「空気を読んで」控えてしまうかもしれません。さらに、この盤はベース、ドラム入りなので(全く空気を読んでいない場面も多いですが)少しだけ抑えた感じになっています。
まあ、「空気読む」なんて最低のフレーズなんですけれどね。
1 response so far ↓
1 NTTコミュニケーションズ // Sep 10, 2008 at 11:21 am
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