jazz.info

"Louis Armstrong, Charlie Parker." (Miles Davis summarizing the history of jazz)

jazz.info header image 2

Pat Martino: Plays Standards (SME)

August 22nd, 2007 · No Comments

Plays Standards

マイミクさんにもなってもらっている尊敬すべきギタリストのみきみきさんに「パット・マルティーノを聴くなら何がいいですかね?」と尋ねたことがありました。ちょうどオフミを兼ねたセッションで「酒バラ」をやる予定もあったので『イグジット』を紹介してもらい、早速買いに行きました。ところがこれが売ってないの。たぶん再発の端境期に入ってしまっていたのでしょう。仕方なしにレコード屋であれこれ見ていると、この『プレイズ・スタンダーズ』を発見しました。裏を見ると、これはコンピで上手いことに『イグジット』からも「酒バラ」を含む3曲が収録されていることが分かり、迷わずこれを購入しました。

家に帰って封を開けてみると、更に上手いことに「酒バラ」の譜面が入っていました。コピーしてみましたが、もう16分のところなんかお手上げなので8分でラインを真似たりしていました。同じ頃、ちょうどサックスの師匠から「酒バラ」でアドリブラインを作ってごらん、と課題を出されていて、B♭m?E♭7のトゥーファイブのフレーズで悩んでいたので、「サックスだしバレねぇだろう」と思いながらマルティーノのフレーズをコピーしたら、「なんだかギターみたいなフレーズですね」と見抜かれちまいました 8)

このコンピは5枚のアルバムから代表曲をピックアップしてまとめたものです。1?3曲目は Footprints から。私が特に好きなのはボサノバの "How Insensitive"。ジョビンの曲でテーマだけでも哀愁がありますが、そのムードを生かしながらもすごいソロを取るマルティーノには感服します。4曲目の "Sunny" 1曲は Live! から。ブルースのようなしつこい畳みかけが凄いです。

5?8までは Consciousness からの4曲。"Impressions" がなんといっても印象的です。ギターだとモーダルな曲の場合優れたフレーズ感が必要になるんですが、これは自然なソロが繋がる優れた演奏です。7曲目のオリジナル "On the Stairs" は、チョッパヤで正確なフレーズを繰り出すマルティーノの頂点を極めた作品だと思います。まあ、よくここまで弾けること!

そして9?11が Exit からチョイスされた曲です。みきみきさんが推薦するとおり、どれも凄い。9曲目が "Days of Wine and Roses" つまり「酒バラ」。しかし何なんでしょう、このテーマ。はっきり言ってぼんやりとした弾きかたです、ハキハキしていない。にもかかわらず、そのニュアンスが深い。だからテーマが終わってアドリブに入るところにでてくる16分がくっきりと際立つわけです。「酒バラ」をギターで弾く時はこう弾くべきだといえるような名演です。それに続くギル・ゴールドスタインのピアノソロも、ある種の潤みを帯びた音色で短いながらも優れたものです。10曲目の "I Remember Clifford"。 この曲はリー・モーガンのオリジナル以外だと、バド・パウエルの止まりそうで止まらない、ギリギリのところで圧倒的に成立する名演がありますが、このマルティーノも優れています。ある寒い冬の晩、ウォークマンにこの曲を録音したテープを入れて聴きながら歩いていたら、マルティーノのアドリブの部分で不覚にも涙を流しました。寂しさの本当の意味を知る男の演奏なのでしょう、一種のハードボイルド的ソロです。それに続くゴールドスタインも哀愁のある音色で涙を誘うソロを取っています。

最後の12曲目 "Lament" はJ.J.ジョンソンの曲で、これまた哀愁のある名曲です。アルバム We'll Be Together Again からの1曲。エレピを弾くゴールドスタインとのデュオでしみじみとした演奏に仕上がっています。

現在はむしろこのアルバムのほうが廃盤らしいので、関連アルバムを2枚ほど下に挙げておきます。

Tags: guitar · Martino, Pat

0 responses so far ↓

  • There are no comments yet...Kick things off by filling out the form below.

Leave a Comment