ハンク、サド、エルビンのジョーンズ3兄弟の長男であるハンク・ジョーンズは、長男らしいというのか、実に落ち着いた感じのピアニストです。この人はスイング寄りの中間派ピアニストで、その柔軟性からベニー・グッドマンと一緒にやったり、レスター・ヤングとコンボを組んだり、あの名盤『サムシング・エルス』に参加したりと活躍しますが、70年代末になって、日本での第?次ピアノトリオ・ブームの波に乗って「グレート・ジャズ・トリオ」を結成し、相当のレコードを吹き込みました。このトリオは重鎮ハンクに、マイルス第二次黄金カルテットのロン・カーター(b)とトニー・ウィリアムス(ds)が加わるということでかなり話題になりましたが、少し話題先行だったような気がします。選曲も「いかにも」で私はあまり買っていません。
それに比べて、'77年吹き込みの『バップ・リダックス』はビバップにばっちり焦点を当て、曲もパーカーとモンクのものをチョイスしているのでブレがまったくありません。メンバーはハンクのピアノにジョージ・デュヴィヴィエ(b)、ベン・ライリー(ds)です。渋い人選です。
A面1曲目 "Yardbird Suite" で、すでにこのアルバムが成功していることが分かる仕上がりになっています。ハンクに特徴的な「分かりやすい」フレーズがビシビシ決まっていく快感!2曲目もパーカーの代表曲 "Confirmation" 通称「コンファメ」です。これもまたハンクの資質に合った曲で名演となっています。3曲目はモンクの "Ruby, My Dear"。モンクの曲であってもハンクはお構い無しに分かりやすくしてしまいます。これは特にロマンティックなバラッドに仕上げ、A面のオアシスとなります。A面最後は再びパーカーの "Relaxin' with Lee"。ベースソロや、4バースを交えて景気良くやっています。
B面1曲目は "Bloomdido"、B♭のブルースです。この曲と上の"Relaxin' with Lee" はモンクの参加した『バード・アンド・ディズ』で演奏されていた曲です。そしてB面2曲目。寺島さんが「ジャズのアルバムはB面2曲目に真の名演あり!」と喝破されていましたが、名曲中の名曲 "'Round Midnight"が来ます。ここでのアドリブも実に淡々として分かりやすいフレーズを連ねているのですが、なぜか引き込まれ、そして飽きることがない。3曲目はB♭循環の "Moose the Mooche"。やはりパーカーの曲です。原点は前の記事でも紹介した『オン・ダイアル』に入っています。最後はモンクの "Monk's Mood"。テーマを崩し気味に弾いて終わっています。
このアルバムはピアノトリオが本当に好きな人、渋みを味わえる人が聴くと至福の演奏だと思います。昔は手に入らず私もLPで求めましたが、最近CD化されたようです。
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