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Thelonious Monk: Brilliant Corners (Riverside)

May 26th, 2006 · No Comments

brilliant corners

1956 Series (11)

1956シリーズも一旦ここで終了したいと思います。まだまだ紹介したい56年のアルバムはあるのですが、そうするとこのシリーズが終わるまで他のアルバムに触れる余裕がなくなるので一旦終わらせます。そしてその掉尾を飾るのはモンクの『ブリリアント・コーナーズ』。1956年も押し詰まった12月17日と23日のセッションです。

このレコードはモンクの最高傑作といわれています。このアルバムの一曲目は表題曲 "Brilliant Corners"。テンポが2種類用意されていて不思議な(というかモンクらしい)曲想です。しかし、きれいな曲。多分私は、個人的にモンクと波長が合うのかも知れませんが、モンクの曲ってどれもきれいだと思うんですよね。以前Blue Note Tokyoに学生を連れてライブを見に行ったとき(トミフラの時だったと思います)、待っている時間にモンクの映像が流れていて、ラウズのソロのときに例の「ダンス」を踊るシーンが映っていたんですが、「あー、やっぱりなー」という感じでストンと理解できた経験があります。音楽で(つまり聴覚で)行われていることを、それまで頭の中で漠然とビジュアル化していたのですが、そのダンスを観ると、まさにその通りだったということです。まあ、思い過ごしかも知れませんが(笑)。さて、ここにもう一人、モンクと波長が合う男がいました。ここでアルトを吹いているアニー・ヘンリーです。ジャズ史的には中堅どころという感じの人なんですが、ここではモンクのイメージとぴったりな音色でこの曲の世界を盛り上げています。ロリンズのほうは、不発とは言わないまでも、二重のテンポに押されていまいち伸び伸びしていない。

ロリンズが伸び伸びと演奏するのは二曲目の "Ba-lue Bolivar Ba-lues-are" です。なんと読むかって?私もよく分かりません。字面通り読めば「バ・ルー・ボリヴァ・バ・ルーズ・アー」でしょうが、誰もそんな舌を噛みそうな読み方はしません。「ブルー・ボリバー」あるいは「ボリバー・ブルース」といえばたいてい通じます。ブルースですが、モンクのカラーが強い、じつに色彩感のある曲です。ここではモンクも長尺のピアノソロをとりますが、これが絶品。モンクのピアノソロというと、マイルスとやった「バグス・グルーヴ」のソロが有名ですが、それにも匹敵する絶妙なソロです。そのソロの最後のフレーズをもらい受けてロリンズがソロを吹きますが、これがまたとてもいいソロです。やはり手慣れたブルースということでリラックスして伸び伸びしています。

三曲目(B面一曲目)は "Panonica"。ジャズに対するパトロネージュで有名なニカ夫人(パノニカ・ド・ケーニッヒスウォーター男爵夫人)に捧げた曲で、いろいろなミュージシャンが取り上げています。モンクはここでセレスタを弾いておとぎ話とジャズの雰囲気を融合させていて面白い演奏です。四曲目の "I Surrender, Dear" はスタンダードで、モンクのソロ・ピアノになります。私はソロ・ピアノに対しては懐疑的で、キースの『ケルン』やチックの『ソロピアノ集』、ポール・ブレイの『オール・アローン』などは持っていても滅多にかけず、たまにかけるといつの間にか寝ているほどです。あのアート・テイタムの手数の多いソロピアノでさえ、かければ眠くなるので先天的にソロピアノ不感症なんだと思います。この曲みたく、アルバムに一曲ぽつんと入っていればいいんですけれどね。そんなわけで、私はソロピアノについて感想を書く資格はないように思います。

最後はモンクオリジナルで、スタンダード化した "Bemsha Swing(ベムシャ・スイング)"。アニー・ヘンリーが抜けてトランペットの名人クラーク・テリーが、ベースはオスカー・ペティフォードが抜けてポール・チェンバースが参加しています。さらにここではドラムにティンパニーを入れているのですが、そのせいか、ローチがまるでケニー・クラークみたいなドラムを叩いています。

これは本当にいいアルバムです。ジャズファンのみならず、音楽ファンなら聴いておくべき演奏ですし、モンクの世界にも触れやすい一枚だと思います。

Tags: Monk, Thelonious · piano

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