これまでも少し書いてきたように、高校時代インチキ・アルバイトをしてはお金を貯めてライブ(というよりコンサートですね)によく出かけていました。ベニー・グッドマン、サラ・ボーン、MJQ、そして寒風西新宿マイルス、近藤等則など、どれも印象的でしたが、最も印象的だったのはビル・エバンスの来日コンサートでした。なぜなら、直前に亡くなってキャンセルになってしまったのですから。この件についてはいずれエバンスの項で書こうと思っています。こんなにフラフラ出かけられたのは結局「生活費」を親がまるがかりで見てくれているからということが大学に入ると痛感されるわけです。
大学に入ると、一人暮らしで学費や生活費を自分で面倒見なければいけないので、一気にコンサートやライブに足を運ぶ機会が減りました。それどころかスレテオ道具も持ち込めない寮生活だったので、実家で何本かダビングしたテープを延々聴く生活ですから、ライブなんてとんでもない。それに諸活動と勉強があるので時間もなく、ほとんど行けませんでした。
その反動で、仕事についてからは頻繁に出かけるようになり、今回紹介するアルバムのプロモーションを兼ねてトミフラがブルーノート東京に来た時も出かけました。ブルーノートに一人で行くのは精神上不可能なのですが、ネットを通じてジャズ仲間ができるのはこの後のことなので、この頃のライブには学生を連れて行きました。帰りが遅くなるので男子学生のみです。行く前にこのCDをテープに録って渡し、当日までに聴いてくるように課題を出したりしました。全くやくざな教師です 8) ライブ会場では寺島さんにお会いして少し話を伺えたりして非常に楽しいライブでしたが、トミフラが禁煙中ということで前列の灰皿を全部片付けられてしまい、「おいおい、『エクリプソ』のジャケはどうなんだよ?あんなでかいパイプ銜えていたくせに」とやや釈然としない思いもしましたがね。
このアルバムは、名盤『オーバーシーズ』のリメイクというか「現時点での『オーバーシーズ』」を吹き込んだもので、5曲が両アルバムに共通しています(「ヴェルダンディ」、「ダラーナ」、「エクリプソ」、「ビーツ・アップ」、「カマリロ」)。また7曲目の "Between the Devil and the Deep Blue Sea" (「絶体絶命」)も、『ハロルド・アーレン集』で演奏しており、このときのプロデューサーはなんとヘレン・メリルです。さて、このアルバムのメンバーはクリス・クロス・レーベルでも活躍している4ビートの若手ピーター・ワシントン(b)とルイス・ナッシュ(ds)。ライブもこのメンツだったので寺島さんが聴きに来ないわけがない。案の定ルイス・ナッシュの横に陣取ってドラムを聴いていらっしゃいました。
このアルバムは日本制作盤でオーディオ・マニア・オリエンティッドでもあるのか、非常に音がいい。録音エンジニアはジム・アンダーソン。ドラムのスティックがシンバルに当たる時の「カツッ」というような芯の太い音まで捉えられていて、うちの安いキカイでも充分に再生されます。ピアノトリオの名盤、名録音盤といってもいいでしょう。いまは廃盤ですが、中古で安く手に入ります。
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