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Clifford Brown: New Star on the Horizon (Blue Note)

February 1st, 2008 · No Comments

new star

日記ブログのほうで『美味しんぼ』の記事を書きましたが、その際10インチ盤について言及しました。レコードのLPにはサイズで12インチ(30cm)と10インチ(25cm)があり、初期のジャズLPには、よくこの10インチ盤が用いられていました。しかし12インチに比べると、当然ながら収録時間が短く、アドリブの発達とそれに伴う収録時間の延長化によって12インチが主流になっていったわけです。

この10インチオリジナルは、おそらくコレクターという人々からすると垂涎の的なのでしょうが、私はそれほど興味がありませんでした。しかし、数年前東芝EMIからブルーノート(そして後にはベツレヘムなど他レーベル)の10インチが復刻されたことがあり、その際にできるだけ持っているCDやレコードと重複しないように集めたことがあります。今回紹介する『クリフォード・ブラウン―ニュー・スター・オン・ザ・ホライズン』もそのときに買った一枚です。しかし、これはBNのクリフォード関係をまとめた名盤『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』と重複しまくり、というか全曲が納まっています。この10インチ復刻は完全予約制で、私もカタログを見ながら被らないように被らないように注文し、その時点ではこのアルバムを当然除外していました。それで当日品物を取りに行くと、いろいろよくしてくれていた店員さんが「私は『クリフォード』を一枚買いましたよ」といって見せてくれたわけです。実物を見ると、しかしなんとも欲しくなるもので「やっぱり僕も注文しておけばよかった」と言うと、「お譲りしますよ」とのこと。そのまま買って帰ったというわけです。

録音は1953年8月28日。メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ジジ・グライス(as, fl)、チャーリー・ラウズ(ts)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds)のセクステット編成。
A面1曲目は "Cherokee"。"All the Things You Are" や "How High the Moon" と並ぶバップの聖典です。曲の最初と終わりにアレンジがありますが、あとはクリフォードのソロ。1コーラス目はジョン・ルイスのピアノが弾くチェロキーのメロディーの上空でブラウニーのペットがアドリブを炸裂させます。後にブラウン?ローチ双頭クインテットで絶世の名演を繰り広げるこの曲は、その演奏の冒頭でハロルド・ランドとブラウニーが互いに半コーラスずつメロディーとアドリブを対位法的に吹き分けています。その原型は実にここにあるわけですね。1コーラス目のサビに入ったところはパーカーの影響がもろに出ています。2コーラス目。ピアノがコンピングに変わり、より自由に飛翔するブラウニーが聞けます。2曲目の "Easy Living" がこれまた名演。ちょうどストリングスのようにアレンジされたバックを従えて、素晴らしいバラード演奏を繰り広げています。途中ダブルテンポになるところでナミダモノのフレーズが出ます。3曲目は クインシー・ジョーンズの "Wail Bait"。ラテンリズムのイントロに続いて整然としたアレンジのテーマが演奏されます。ソロの先発はジョン・ルイス。続いてジジのアルト。再びテーマが繰り返されたあと、満を持してブラウニーの輝かしいソロが炸裂します。次がラウズのテナーですが、やはりブラウニーには誰もかなわない。

B面1曲目はクリフォードのオリジナルで "Minor Mood"。イントロは冒頭がメジャーなのにマイナーになっていく不思議な曲想。テーマは『クールの誕生』の "Jeru"に似たようなメロディーで、ちょっとトリスターノ楽派の風味も入っています。そのせいかブラウンのソロも長く起伏に富んだホリゾンタルなライン。続くジジ、ラウズのサックスもそうで、なんだかリー・コニッツのセッションを聴いているような感じがします。2曲目の "Hymn of the Orient" はジジ・グライスの曲。哀愁のあるテーマです。ブラウニーが先発。曲の哀感を保ったまま目くるめくソロを展開します。ラウズとジジは半コーラスずつソロを取り、ピアノのジョン・ルイスが美しいソロを取ります。ドラムと各楽器との4バースを経て後テーマになだれ込みます。3曲目の "Brownie Eyes" はタイトル通りクリフォードのペットを全面にフィーチャーしたクインシーのバラード。A面の「イージー・リビング」と対になるような名バラードです。

最近このジャケット・デザインで『メモリアル・アルバム』が再発されたようです。しかも別テイクを含めると計18曲、3倍も入っています。『メモリアル・アルバム』は従来のジャケット写真のほうがよいような気もしますがRVGリマスターということで、音質も楽しみです。

Tags: Blakey, Art · Brown, Clifford · Lewis, John · trumpet

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