「ラバーマン」の器楽演奏というと、まず頭に思い浮かぶのはパーカーのラバーマンセッションである。同じダイアルセッションのタイトルにある「ムース・ザ・ムーチェ」という名のヤクの売人が逮捕されてしまい、麻薬が手に入らなくなったパーカーがウィスキーを1リットルも飲んでヘロヘロになったまま吹き込んだ伝説的な演奏である。
このセッション後、パーカーはホテルに戻ったが、意識朦朧としたまま全裸でホテルをうろつき、おまけに失火まで出してしまって逮捕。その後カマリロ州立病院に収容され麻薬中毒の治療を行う。
ポストカマリロで彼は再びラバーマンに挑戦する。
わが敬愛する油井正一先生は「忌まわしい記憶がよみがえったのか、生硬で闊達さに欠ける」とおっしゃっているが、私としては、おそらくパーカーはこの時いつもみたいな奔放なアドリブを目指したのではなく、きっちりテーマとフェイク(くずし)をやりたかったのではないかと睨んでいる。事実、パーカーのテーマ解釈こそこの曲のメートル原器になっている。
パーカーの影響のみならず、この曲の楽想から女性声域であるアルト(サックス)に名演が多い。とりわけリー・コニッツの演奏は彼のバラッド演奏の真骨頂ではなかろうか。実に素晴らしい。
そして、パーカーにスーパーサックス(パーカーのラインをサックスのソリで模写したバンド)があるように
リーの演奏はピアノのクレア・フィッシャーがオーケストライズしている。
ソニー・スティットは、パーカー在命中は彼に遠慮してアルトを吹かなかったと言われるが、パーカー没後、パーカーの後継者は俺だと云わんばかりにアルトを吹く、サックスの天才である。彼は何度も、それこそアート・ペッパーともデュオで「ラバーマン」を録音しているが、個人的に一番好きなのはこの「バーニン」バージョンである。
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